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掲載期間 [2016.8.31〜9.26]

西都の豊かな自然の中、牛に優しい環境に配慮し、独自の発酵飼料で丁寧に育てた宮崎和牛“齋藤牛”のブランド力とは?

宮崎県西都市は、宮崎県のほぼ中央部に位置し、古代は“日向の国”として栄えたこの地域には、数多くの神話や伝説が伝えられ、日本最大級の古墳群があることでも知られています。温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、昔から農畜産業が盛んなこのエリアで、畜産業を営み、ブランド宮崎和牛“齋藤牛”を育てているサイトーファームさんを取材しました。

この仕事をはじめたきっかけは?サイトーファームについて教えてください。

もともと畜産農家としては祖父の代からなので、私で三代目です。高校を卒業した後、農業大学校に入って、卒業後に家業を継ぎました。就農して12年目ぐらいです。当時は不景気で市街地に出ないとなかなか仕事がない状態だったので、同級生の中でも都会に就職した子がいましたね。それでも私たちより後輩の世代は、徐々に就農人口も増えていったように思います。最近は家業を継ぐために地元に戻ってくる人も増えてきましたね。
現在、4ヶ所にある牛舎には、1700頭の“齋藤牛”を飼育しています。6年前の口蹄疫の際は、当該地区に疾患した牛はいなかったものの、政府の方針により550頭殺処分して、大変な時期もありましたが、そこから頭数を順調に増やしてきました。その他に直売所、レストランを運営しています。レストランはオープンして3年目になります。齋藤牛を食べていただける場所は、直営レストランをはじめ、主に関東、福岡市内の飲食店です。販売では高級志向・高価格ブランド専門の精肉店などで扱ってもらっています。

“齋藤牛”のお話を伺う前に、宮崎は畜産業が盛んで”宮崎牛”も有名ですね。そもそも”宮崎牛”の定義とは?

宮崎牛は全国の和牛大会で二年連続優勝しているくらい“日本一の牛”というブランド力があるんですけど、そこをもっと絞っていこうという流れがあって。去年くらいから定義が狭くなったんですね。それは、宮崎生まれの子牛であること。うちも含め、それまでは熊本やその他県外から買っていた所も多かったんですが、“宮崎生まれの子牛”と限定されたことで生産数はだいぶ減ったと思います。
それ以前から育てていた県外産の子牛が全体で4割ほどいますが、その牛たちは、「宮崎県産牛」、「宮崎和牛」とした名称で販売することにはなります。うちの場合だと、その定義が決まる前から「齋藤牛」として差別化していたので、バイヤーさんも流通させやすいし、消費者の方にも生産者が明確な点、珍しい名前という点で手にとってもらえるんじゃないかなと思っています。
齋藤牛というブランドを確立させたのは4年前。農業、生産現場でしか働いたことがなかったから ブランディングや経営、流通についてはド素人。一から勉強して、やりながら覚えていくといった 感じでしたね(笑)。

なぜ宮崎牛がそこまで評価されるようになったと思いますか?

やはり品質ですかね。何十年も前から県の取り組みとして牛の生産にこだわってデータをとって、コツコツやってきていたので、口蹄疫の大打撃も乗り越えられたというのはあると思います。全国的に畜産業者のみなさんの中でも「子牛を買うなら宮崎県」という意見は多いようです。

“齋藤牛”へのこだわりについてお聞きします。どのように育てられているんですか?

まずは子牛へのこだわりからですかね。生後8か月くらいの子牛を購入しています。 子牛を購入する際の目利きとしては、大きさ。やはり大きなもの、体つきが立派なものですね。あとは毛質。毛並が荒くなくて揃っている方がいいです。ほかに父牛、母牛の血統も重要ですし、蓄積された母牛の出生データなんかも参考にしますよ。高い買い物なので(笑)。全国平均でいうと一頭85万〜90万円。うちが買うのは、それよりさらに高い100万円前後の子牛。以前より全国的に和牛の頭数が不足している状態なので、そこからさらにこだわって…となるとどうしてもそのくらいの値段がつくのでしょう。
飼育する上で大切なのは、環境。牛舎を清潔にしておくことです。なるべくハエの発生を抑えるようにはしています。特に餌場を清潔にします。掃除以外にも換気であったり、体調管理を細やかにしてあげることですね。
ちょっと調子が悪いとビタミンを飲ませたり、特に夏場だとすぐ熱中症になってしまうので。口蹄疫の際に導入した散水機で決まった時間に水をまくようにしていて、温度調整には気を使っています。冬になると水ではなくウイルスや雑菌の増殖を抑えるための消毒用として使います。もちろん牛に有害なものは使いませんが、人間のインフルエンザなんかと同じで、ウイルスは冬場のほうが蔓延しやすいんですよ。それ以外では、例えば、カビなんかは夏場のほうが増えやすいですけどね。
あとは通路を人が通っても、牛たちが無視しているぐらいリラックスできる環境づくりも大事にしています。 よく昔から「食べてすぐ寝ると牛になる」なんて言うじゃないですか。これって牛を育てるのには実は重要なポイントだったりするんです。食べてすぐ横になれるような安心できる環境っていうのが。

“齋藤牛”の味の特徴を教えてください。

健康志向で最近流行ってる赤身肉や熟成肉なんかと違って、齋藤牛は差しが多いお肉なんです。普通だったら赤身の部分なんかにも差しが入るような牛なので。かといって、脂身が多くて柔らかくても、油がくどくてきつく感じてしまっては、せっかくの高いお肉が台無しなので、油の質にはこだわるようにしています。ビール粕、おからといったいわゆる食品産業残渣、その他にとうもろこし、大麦なども食べさせています。ただ、とうもろこしや大麦なんかが多いと、油っこく、くどい脂身になってしまうんです。先ほど言った、おからやビール粕でつくる飼料は以前は自家配合発酵飼料として自分たちで作っていたのですが、供給が追い付かなくなってきたので現在は福岡の工場で生産してもらっています。品質管理という点では、逆にそのほうが徹底されているので、安定して供給できるんです。人間が食べても問題のない原料を15種類混ぜて飼料を作ります。飼料作りは1日、発酵の工程に2週間かかるんですが、このほうがエサの状態としても、牛の体にもいいんですよ。もちろん抗生物質や化学成分は入っていません。
ただ1700頭の牛が1日に2回このエサを食べるとね、17~18トン必要なんですよ、1日で(笑)

“この仕事の醍醐味、楽しさについて教えてください。

経営者としては数字を気にしないといけない、規模を拡大していかないといけないのですが、やっぱり生産者としては、直営のレストランで召し上がっていただいたお客様から味の感想を聞けた時ですかね、嬉しいのは。普通生産者っていうのは野菜でもなんでも、お客さんの声を聞くことができないんですよ。直接お渡しするってことがなかなかできない。そういう意味で、このような直売だったり、レストランでお客様の反応をうかがえるのは本当にうれしいですね。

“今後の展開、夢は?

今のところは10名ほどで運営していますが、今後はもっと頭数も増える見込みなので農業や畜産に興味のある人に来ていただければいいなと思っています。そのためにも、若い人たちの受け皿として、研修ができるような受け入れ態勢も整えていくつもりです。全国的にみても、畜産農家が直面する最大の問題は、やはり後継者不足なので。
あとはやっぱり“齋藤牛”の認知度を高めることですかね。最近では海外からも販売の要望や農場視察もあったりして、海外での販売も試験的に始めてみようと思っています。日本国内でも今後は高級ラインの精肉だけでなく、お求めやすく調理もしやすい加工品なども徐々に増やしていって、さらにイベントなどにも積極的に参加して、このブランドをもっと広げていきたいです。

博多FARMERS’MARKETのお客様へメッセージをお願いします。

宮崎の牛、“齋藤牛”のおいしさを福岡の皆さんにも知っていただきたく出店することとなりました。ぜひご賞味ください!

加藤 恵 加藤 恵(かとう めぐみ) 大分県出身
博多ファーマーズマーケット編集部ディレクター。
趣味は美味しいお店めぐり。
魚と日本酒好き。
博多ファーマーズマーケット編集部

宮崎市内から車で1時間半ほど。西都の豊かな自然が広がる場所にサイトーファームさんの牛舎と直売所がありました。このエリアは、昔の偉人のお墓“西都原古墳群”が存在しているため、美しい自然が守られているほか、津波も来ないと言い伝えられているそうです。取材に応えていただいたサイトーファームの若き専務 齋藤幸紀さんは、穏やかで落ちついたお人柄でした。私と1つしか年が違わないことに失礼ながらびっくりしつつも(すみません!笑)、この地域の畜産業のこと、宮崎和牛のこと、“齋藤牛”を育てるための環境づくりやこだわりの発酵飼料について、そして育てつづけるためのご苦労について、1つ1つ丁寧に答えていただきました。美味しい牛を育てるには、“食べてすぐ寝ると牛になる”ということわざのように、牛が安心して寝られる=暮らせる環境づくりに配慮し、人が食べられる原料で飼料を作り、体調管理を徹底するなど牛に向き合うことが大切だということを感じました。また美味しい牛=“脂がくどくなく、美味しい”というのも納得です。品質の良いお肉を食べると胃もたれせずに脂身まで美味しくいただけることにあらためて気づきました。美味しさや品質の良さは細部にまで行き渡っているもので、サイトーファームさんの牛へのこだわりその物が、ブランド宮崎和牛“齋藤牛”の品質その物だと取材を通じて感じました。直売所で販売している“齋藤牛”のお肉を見せていただきましたが、端っこまで美しくサシが入っていて、とてもキレイなお肉でした。“齋藤牛”がさらに国内外へ広まることを願いつつ、今回も素敵な取材となりました!
34歳の若き専務 齋藤さん。私達世代にバトンがきているんだなぁと再確認しながら、私もがんばらなくてはと思う1日でした。

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