知る・見る・食べる 有機野菜

有機農産物とは?

オーガニックって何?

「有機(オーガニック)」という言葉を耳にすることが増えてきました。
「有機(オーガニック)」を謳ったレストランやショップも続々と登場しています。
そもそも、「有機(オーガニック)」とは何でしょう?

「有機(オーガニック)」とは、
自然環境(太陽・水・土地・大気)との調和を大切にし、
そこに生息する多様な生きものとの共生を図り、
環境保全や食の安全に配慮した農林水産業や加工方法のこと。
農業で言えば、化学肥料や農薬に頼らずに、丁寧な土づくりを行い、
自然の摂理に沿って作物を育てる農業を表します。

食べものは、人の身体を作り、心を満たすもの。
自分や自分の大切な人がすこやかであるためにも、
そして、次の世代に残すべきものをきちんと残し、未来に伝えるためにも、
“何を選んで食べるか?”は、とても大切なことです。

「有機農産物とは何か?」
「どんなふうに見分けたらいいのか?」
「どこで買える(食べられる)のか?」を知って、
出来るところから、少しずつ、オーガニック・ライフを始めてみませんか?

有機農産物って何?

有機農業に関する国際統括団体IFOAM(アイフォーム=国際有機農業運動連盟)では、有機農業について次のように説明しています。

有機農業(オーガニック)は、土壌と生態系、そして人々の健康を持続させる生産システムである。有機農業は、地域の条件に適合した生態的なプロセス、生物多様性や循環を活用し、悪い影響を与える投入物を使用しない。有機農業は、関わるすべてのもののために伝統と革新と科学を組み合せ、共有している環境に利益をもたらし、公正な関係性とよい生活の質を促進する。

日本では有機JAS制度(※)によって、「有機農産物」「オーガニック」と表示する場合は下記の条件を満たしたものであることが義務付けられています。

1. 「化学的に合成された肥料や農薬の使用を避けること」「遺伝子組換え技術を利用しないこと」を基本として、環境への負荷を出来る限り低減した栽培方法で生産された農産物であること。
2. 種まきや植え付け前に、2年以上前から、許容された資材以外を使用していない田畑で栽培すること。
3. 栽培期間中も、許容された資材以外は使用しないこと。
4. 遺伝子組換え技術を使用しないこと。

※JASは「Japanese Agricultural Standard = 日本農林規格(正式名称は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」)の略称。

有機農産物

けれども、多くの有機農業関係者は、「農薬や化学肥料を使わなければそれで良いというものではない」と考えています。

「有機農業」という言葉は、1971年に「日本有機農業研究会」を設立した一楽照雄氏によって生み出されました。漢詩の一節である「天地有正気(天地に正気有り)」という言葉をヒントに、「天地有機(天地に機あり=自然界には“機”、つまり、“仕組みや法則”があるという意味)」という言葉が生まれ、自然の摂理に沿って作物を育てる農業が「有機農業」と名付けられたのです。

自然界の仕組みや法則にのっとった農業とは、いったいどんなものなのか…と考えた時に、有機農業の本質が見えてきます。「化学農薬や化学肥料を使わないことで、水・土・大気を汚染から守ること」、「自然界の動植物を守り、生物多様性を保全して、自然との共生を目指すこと」、「適地適作・地産地消で、地域の文化を大切にすること」、世界レベルで考えれば「児童労働の禁止・植民地栽培の排除・南北格差の解消など、人を大切にする社会を実現すること」など、有機農業の取り組みは多様な目標を持っていると言えます。もちろん、「食べものの安全性を確保すること」は、何にも増して優先されるべき目標です。

有機JAS認証って何?

有機JASマーク

上記「有機農産物って何?」の項目で、有機JAS制度に基づく“有機農産物と表示するための条件”を記しましたが、厳密に言えば、その条件が満たされただけでは「有機農産物」と名乗ることができません。国の制度に基づいて「有機認証(※)」を受けた生産者・生産者団体(生産行程管理者)だけが、「有機」「オーガニック」と表示(有機JASマークを貼付)することが許されるのです。

※農林水産省の登録認定機関が厳しい検査を行ない、有機JAS規格に従った農地と栽培方法で作られているのかどうかを確認した後に、生産者・生産者団体に有機の生産行程管理者としての認証が与えられます。そしてこの、有機認証を受けた生産者のみが、「有機JASマーク」を付けることが出来ます。登録認定機関とは、農林水産大臣に登録された第三者機関で、有機JAS制度の基準を満たして生産することができる生産者・加工品メーカーであるかどうかの検査・認定を行う機関です。

有機JAS規格を満たす農産物・加工食品でなければ「有機」等と表示した(=有機JASマークを付した)商品を販売することは出来ません。しかし、この規格は、広告等に「有機栽培」「無農薬」といった表記をすることを制限するものではないため、生産者や業者がホームページやパンフレットで「有機栽培」として販売していても(それが虚偽表示で無い限り)問題とされない状況にあります。

有機JAS認証を受けていない“有機農産物”はあるの?

「有機JAS」の認証を取得しないままで、「農薬も化学肥料も使わない栽培」や「動物性の堆肥を使わない栽培」、さらには「農薬だけでなく、肥料も一切使わない栽培」などを行なっている農家もあります。そうした篤農家(研究熱心で優れた技術を持った農家)の多くは、消費者との長年に渡る直接的な信頼関係で結ばれ、「提携」という方法で直接消費者に届けたり、生活協同組合や有機農産物の専門流通団体が行う「産消提携(契約栽培・直接取引)」という流通方法で取引を行なったりしています。

「提携」とは、生産者と消費者が直接農産物のやり取りをする方法で、先に紹介した一楽照雄氏が生産者と消費者の交流や学習を重視して提唱しました。日本有機農業研究会では、以下のように「提携10ヶ条」を定めています。(1978年11月25日「第4回全国有機農業大会」で発表)

  • 相互扶助の精神
  • 互恵に基づく価格の取決め
  • 会の民主的な運営
  • 理想に向かって漸進
  • 計画的な生産
  • 相互理解の努力
  • 学習活動の重視
  • 全量引き取り
  • 自主的な配送
  • 適正規模の保持

※現在は宅配便も発達している上、インターネットで生産者と消費者が情報を直接やり取りできる時代になったこともあり、「提携」の現代版が随分と増えてきました。色々検索して体験してみると、きっと様々な発見があり、自分の好みやライフスタイルにフィットした生産者や団体が見つかることでしょう。

※2010年における、全国の“有機JASでない有機農家数”は7,865、“有機JAS取得の農家数”は3,815、合計で11,680。日本全国に約12,000の有機農家があると推定されました(農林水産省公表)。

日本の農産物は3つに分かれる。

日本の農産物

▼慣行栽培農産物

慣行栽培農産物は、その地域で慣行的に行われている農法で作られたものを指し、一般的には、化学合成農薬・化学合成肥料・除草剤などが使用されます。使用した化学合成農薬・化学合成肥料・除草剤などを表示する義務はありません。この場合の「慣行」は“昔からの”という意味ではなく、現代(特に戦後)になってから一般的になされてきた近代農法のことを指します。日本の農産物のほとんど(90%以上)が慣行栽培によるものです。

▼特別栽培農産物

特別栽培農産物は、“その地域で慣行的に使用される農薬・化学肥料の量を50%以下に削減して生産した農産物”のことです。この場合、削減された割合も表示することになっています。(例:「農薬…当地比7割減」など)(※1

▼有機栽培農産物

有機栽培農産物は、種まきや植え付けの2年以上(多年生作物の場合は最初の収穫の3年以上)前から、農薬・化学肥料・除草剤を使っていない(※2)田畑で作られたものです。そして、有機栽培の証しである「有機JASマーク」を付けています。農産物の国内総生産量に占める有機農産物の割合は0.24%(2011年度/農水省発表)です。

※1)1999年のJAS法改正により、「有機農産物」と表示できる条件が非常に厳しくなったため、減農薬・減化学肥料の農産物について新たな認証を求める声が生産者や消費者から高まりました。以来、多数の都道府県で「減農薬・減化学肥料」の農産物に関する独自の認証制度が制定されたのですが、それらを包む形で、2001年に農林水産省が「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」を改正。減農薬・減化学肥料の農産物を特別栽培農産物と表示して生産・出荷出来るようになりました。

※2)有機農産物のJAS規格では、農薬や化学肥料は原則として使用しないこととされていますが、通常の有機農産物に用いる防除方法だけでは有害動植物を効果的に防除できないなど、やむを得ない場合に限り、有機農産物の国際基準に準拠した一部の農薬の使用は認められています。必ずしも「有機=完全無農薬」というわけではありません。

『無農薬』『減農薬』『無化学肥料』『減化学肥料』表示はNG

安心野菜の代名詞表示はNG

「有機」以外の安心野菜の代名詞として「無農薬野菜」「減農薬野菜」「無化学肥料」「減化学肥料」などという言葉が使われている場合がありますが、これらの表現は、2004年4月1日に施行された農林水産省の「特別栽培農産物ガイドライン」によって使用禁止とされたので注意が必要です。

それまでガイドラインの表示に使われてきた「無農薬」「無化学肥料」の表示が、生産者にとっては、「生産過程において農薬(化学肥料)を使用しない栽培方法により生産された農産物」を指す表示でしたが、この表示から消費者は「土壌に残留した農薬(化学肥料)や周辺の田畑から飛散した農薬(化学肥料)を含め、一切の残留農薬(化学肥料)を含まない農産物」であると受け取りかねないという懸念があったからです。

また、「減農薬」「減化学肥料」の表示は、削減の比較対象となる基準が不明確・削減割合が不明確・何が削減されたのか不明確(使用回数なのか残留量なのか)等、消費者にとって曖昧で分かりにくい表示であると判断されました。

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