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対談企画
~料理長 野口清 氏 × 生産者 喜屋武誠司 氏~
気候変動がもたらす猛暑や豪雨、農家の高齢化等。食にまつわる課題がある一方、2025年現在、日本の農林水産物・食品の輸出額が過去最高を記録し、最多人数の更新が続く訪日外国人の来日目的の上位が食であることから、その品質の高さから注目を集める日本の食。難しい課題に直面しながらも、食の最前線で消費者の期待に応える生産者と料理長の対談を通して食の現状、ニーズ、可能性について深掘りする。
対談者プロフィール
料理長
イタリア料理店「インコントロ」
料理長
野口 清 のぐち きよし
調理師学校卒業後、東京のホテルレストランでフレンチをベースとする欧州料理の腕を磨く。パスタ料理に魅かれ、イタリア人シェフのもと、ピッツェリアやリストランテで研鑽を積む。農産物専門店にて農産物の扱いと調理を深化させたのち、2012年にグランドニッコー東京台場のイタリア料理店「インコントロ」料理長に就任。
生産者
北総クルベジファーマーズ
代表
喜屋武 誠司 きやたけ せいじ
畑にバイオ炭をまいてCO₂を削減する「環境に配慮された農産物」の栽培や農家への普及啓蒙、新規就農者の支援、消費者及び飲食店に魅力を伝えての販売活動、農産物収穫やバイオ炭作りの体験プログラム等を通して、「未来の子ども達に確かな未来を残す」ための活動を展開する。
環境に配慮された農産物のニーズについて
喜屋武⽒:
まず初めに環境に配慮された農産物について説明させていただきます。放置しておくとCO₂を放出する枯れた竹や間伐材、稲のもみ殻等を、基準を満たした方法で炭化することで「バイオ炭」を作ります。このバイオ炭を畑にまいて、その畑で作られた農産物を環境に配慮された農産物と定義しているわけですが、その理由はバイオ炭を畑にまくことで大気中のCO₂削減が見込めるとともに、畑の土壌改良に繋がるからです。私たちは、環境に配慮された農産物(畑にバイオ炭を埋めて地球を冷やす農産物)の栽培、販売を手掛けています。
野⼝料理長:
うちのレストランのお客様は物語性ある食材を好む方が多いのと、訪日外国人のご来店が多くベジタリアンの方もいらっしゃるので、環境に配慮された農産物はとても喜ばれると思います。私たちが扱わせていただくとしたら、メニュー表への「環境に配慮された農産物」の掲載やホールスタッフによるお客様への説明を通して食材の魅力を伝えていきたいです。
喜屋武⽒:
とても心強くありがたいお言葉です。私たちの取り組みを多くの方々に知っていただくためには、飲食店さんとの連携が大事になると考えています。正直申し上げると少し値段は高くなるのですが、環境に配慮された農産物を使ってみたいと思われますか?
野⼝料理長:
まだ使ったことはないのですが、一般的な農産物より少し高くても使ってみたいです。ただ、既存メニューの価格を上げて使用する農産物を環境配慮の農産物に置き換えるのは現実的に難しいので、現在扱っていない農産物を「環境に配慮された農産物」から選んで、それを使った期間限定おすすめメニューを考えたいですね。ちなみに本日お持ちいただいたカリフローレ、ハンサムグリーンとハンサムレッドはぜひ使わせていただきたいです。あとチリメンキャベツがあれば、ぜひ使ってみたいですね。
喜屋武⽒:
ありがとうございます。チリメンキャベツ、サボイキャベツですね。毎年作っているので収穫期になったらご連絡します。私たちと一緒に「環境に配慮された農産物」を作っている農家さんは個性的な農産物を作っているので、他にもご案内したい農産物が色々あります。世代的に若い農家さんが多いのも特徴で、新しいチャレンジを好む傾向があるので、探している食材ありましたらお気軽にご相談ください。料理長からご相談いただけると若い農家さんのモチベーションアップに繋がるのでありがたいです。
料理長が考える仕入について
喜屋武⽒:
差し支えなければ、野口さんの食材仕入方法について教えてください。あと、作りたい料理から食材仕入を検討なさるのか、もしくは使いたい食材から料理をお考えになるのかについて教えてもらえますか?
野⼝料理長:
私から取引会社さんに、「こういう食材を探してください」と伝えてご提案いただくケースもあれば、私が産地を訪問してどのように作られているかを見て、生産者さんから話を聞いて仕入れたこともあります。作りたい料理からではなく、私は“使いたい食材”から仕入を考えます。以前、農産物を多く扱うレストランに在籍してて、有機・特別栽培の農産物や珍しい農産物を好んで使っていたこともあり、今も肉や魚のメイン料理には必ず農産物を使っていて、意識としてはメインを農産物にもっていきたいと考えながら料理しています。
喜屋武⽒:
うちの産地やバイオ炭作りの様子など、ご都合許せばぜひ見学にいらしてください。ちなみに野口さんにとって、どのような形での仕入がご都合よろしいですか?
野⼝料理長:
直接発注、直接やり取りさせていただきたいです。「こういうものを作れないですか?」とお尋ねしやすいですし、最近は猛暑の影響で仕入が難しくなってきているので、色んな食材を提案いただけたら嬉しいです。仕入れさせていただく際、うちのようなお店だと食材の安定供給が大切で、1か月間の供給可能な食材を提案いただけたらありがたいです。
バイオ炭が農業にもたらす可能性、メニュー開発について
野⼝料理長:
畑にバイオ炭をまくことで土壌改良に繋がるそうですが、農業にどのような効果が期待できるのですか?あと、生産者さんや消費者の声を教えてください。
喜屋武⽒:
土壌の保水性や保肥力の向上、土壌に好影響をもたらす微生物の繁殖等が期待されていて、生産者からは生育ペースや収量の観点から喜びの声が届いています。消費者からの味の評判も良いです。畑にバイオ炭をまくとCO₂削減に繋がるものの、生産者に費用と労力が掛かるので、やはり生産者と消費者にメリットがあってこそ広がる活動だと思います。その上では、圃場での試験や飲食店さんにお取り扱いいただくことが大切になると考えています。
野⼝料理長:
ぜひ「環境に配慮された農産物」を用いたメニューを開発したいです。
喜屋武⽒:
ありがとうございます。例えば秋頃だと紅はるか、カボチャ、ゴボウや里芋等の根菜類があります。イタリアンで根菜類を使われることはありますか?
野⼝料理長:
うちのお店では里芋はあまり使いませんが、ゴボウは使います。すりおろしてソースに混ぜたり、グリルしてシチリアの岩塩を添えて提供しています。
喜屋武⽒:
ご連絡いただけましたら、複数のおすすめ農産物を送らせていただきます。お試しいただき、メニュー開発してもらえたら幸いです。使用農産物を決められたのち、希望するサイズ感や他ご要望あればお気軽にご相談ください。
野⼝料理長:
ありがとうございます。お客様に喜んでもらえるメニューの開発と、レストラン一体となって「環境に配慮された農産物」のPRに取り組むので、色々教えていただけたら幸いです。
対談後
野⼝料理長:
最近、喜屋武さんが取り組んでらっしゃることを教えてください。
喜屋武⽒:
仲間内に若い農家さんが多いのと新規就農者もいるので、何とか彼らの所得向上に繋がるような活動に力を入れています。具体的には、売れ残り農産物や規格外農産物をペーストに加工して、消費者向けに試食販売したり。あとは、農福連携ですね。就労継続支援B型の施設と連携して、一般企業での就労が難しい方々にバイオ炭を畑にまいてもらう等、うちの畑仕事を手伝ってもらっています。こちらの施設の理事長が元々中華の料理人だったので、今後加工品のバリエーションを増やせると思いますし、それに伴って施設の方々の仕事を増やしていければと考えています。
野⼝料理長:
素晴らしいですね。以前お付き合いある農家さんから、「なすがたくさんあるから、なんとかなりませんかね?」と相談いただいたことがあります。その際は農家さんにピューレに加工してもらって、大人数の予約が入った際に使わせていただきました。話変わりますが最近夏場の、イタリアントマトのイエローの入手が難しくて。黄金のマルゲリータというメニューを提供していて、イエローのトマトソースが肝でして。イタリアントマトのイエローが手に入らないので、黄色いトマトを色々試したのですが、どうもイメージと合わなくて。
喜屋武⽒:
今まで作ったことはないですが、加工用に使われるトマトであれば皮が硬いと思われるので、作りやすいトマトだと思いますね。野口さんから、「これぐらいの量が欲しい」とご希望いただけましたら、すぐに栽培を検討させていただきます。
※本取組は、グリーンイノベーション基金事業(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))の委託業務(食料・農林水産業のCO₂等削減・吸収技術の開発)として実施しています。
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