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対談企画
~料理長 井上和豊 氏 × 生産者 喜屋武誠司 氏~

対談者プロフィール

料理長

中国料理「スーツァンレストラン陳 渋谷」
料理長
井上 和豊 いのうえ かずとよ

調理師専門学校卒業後、四川飯店に就職し、「スーツァンレストラン陳 渋谷」に配属。2年目に出場したコンクールで予選を1位で通過し、決勝戦では銅賞を受賞。4年目で再び挑んだ同コンクールでは最年少で金賞受賞を果たした。2016年、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」に参加しグランプリ「レッドエッグ」受賞。新卒から一筋に研鑽を積み、2017年に料理長に就任。

生産者

北総クルベジファーマーズ
代表
喜屋武 誠司 きやたけ せいじ

畑にバイオ炭をまいてCO₂を削減する、環境に配慮された農作物の栽培や農家への普及啓発、新規就農者の支援、消費者及び飲食店への販売活動、野菜収穫やバイオ炭作りの体験プログラム等を通して、「未来の子ども達に確かな未来を残す」ための活動を展開する。

開発メニューのご紹介

喜屋武⽒:
北総クルベジファーマーズの農作物を使用したメニューフェアにおいて、ご提供いただくお料理をご紹介いただけますか?
※メニューフェア期間:2025年11月1日(土)~30日(日)

井上料理長:
4品のメニューを開発しました。
1品目が「北総泡菜」、野菜のピクルスです。日本と同じように、中国においてもお漬物は身近な料理です。お送りいただく旬の食材を漬物にしてフェア期間中ご提供します。
2品目が「黄金南瓜鶏」、南瓜と鶏モモ肉の老油煮込です。美味しい煮込料理を作れるのが四川料理の魅力で、強い火力で短時間で一気に煮詰められることから、野菜の形が崩れず、野菜本来の味が残ります。四川料理らしく唐辛子とラー油でピリッとしたアクセントを加えました。
3品目が「魚香煎鮮魚」。麻婆茄子の感覚でソースを作って、魚とナスのペースト、角切りにして衣を付けて揚げた白丸ナスを合わせました。色んな食材を一皿で表現できるのが中国料理の魅力と考えていて、魚メインの料理でありながらも野菜をしっかり味わえる一皿です。
4品目が「紅苕甜彩々」、サツマイモの中華甜心です。サツマイモは中国料理で欠かせない食材で、焼き菓子や揚げ菓子によく用いられます。うちのお店らしく、紫芋でアイスクリームを作り紹興酒のソースをかけました。

北総泡菜
(北総クルベジさんから届く野菜のピクルス)

黄金南瓜鶏
(北総クルベジさんの南瓜と鶏モモ肉の老油煮込み)

魚香煎鮮魚
(鮮魚の照り焼き
北総クルベジさんの茄子を加えたスパイシーソース)

紅苕甜彩々
(北総クルベジさんのさつまいもの中華甜心)

喜屋武⽒:
食材それぞれの味が活かされていて、とても美味しいです。畑にいると、料理人の方や食べている方の顔が見えず、話を聞ける機会もないなかで、井上料理長がどのような考えで料理なさっているかをお聞きできて、思いもよらない調理法を目の当たりにして、とても良い刺激をいただきました。実際食べさせていただいて、目にも鮮やかで美味しい料理の力はすごいなと実感しました。

料理長が考える仕入について

喜屋武⽒:
差し支えなければ、井上さんの食材仕入について教えてください。

井上料理長:
価格や取引条件以上に、生産者さんの熱量、生産者さんと会話させていただくことを重視しています。可能な限り現地に足を運んで、現地で生産者さんから直接お話をお聞きすることで、料理する際に一層思いがこもります。先日、北総クルベジさんの畑にお邪魔して、初めて食べた食材や、お米の粒の大きさを揃えて出荷するこだわりを聞いて、「料理に使いたい、早く料理を作りたい」と心底思いました。実際料理して、食材の味や違いを知って、料理人としてとても勉強になりました。食材の仕入には、生産者の現地に行くことに加え、週に1回は豊洲(市場)へ足を運び、仕入れを行うとともに、卸業者や来場している料理人などと積極的に情報交換を行うことを大切にしています。

喜屋武⽒:
バイオ炭を圃場に撒いて、手間暇かけて栽培すると、どうしてもコストがかり価格が上昇します。しかし、その栽培への思いや良さを知って納得し、購入してくださるお客様がいてこそ、私たちは生産者として存在できます。生産者が自信を持てる「味」と「数字的根拠」を添えることで、飲食店様や消費者の方々に選んでいただき、その結果、圃場を増やし地域を潤すという、良いサイクルが実現できると考えています。井上さんから高評価いただけたことを、地元に帰って仲間の生産者に共有して、みんなで一層頑張りたいと思いました。

井上料理長:
良い食材は高くて当然で、あまり値段を考えすぎずに食材と向き合いたいと日頃から思っています。お客様の反響を見つつ、料理人として「これを使わせていただきたい」と思う食材を使っていきたいです。

欲しい食材について

喜屋武⽒:
日頃使う食材についてのご要望や、現在探している食材があったら教えてください。

井上料理長:
僕の料理に合わせた食材を探すのではなくて、今ある食材の状態でどうやって美味しい料理を作るかを追求したいと思っています。例えば甘いサツマイモが欲しいとか、こういう形のジャガイモが欲しいといった要望は僕にはないです。ただ、探している食材はあります。中国料理だと、中国と日本の関係性が冷え込んだ時に中国からの食材輸入がストップしたり、客足が遠のいたりと色んな影響を受けます。豆板醤を自分で作るのですが、四川省にしかない唐辛子があってそれがないと困るので、その種を入手して、新潟県の農家さんに作ってもらっています。あと国産の空心菜が安定的に入手できればいいなとか、たくさん使う葉ニンニクが入手出来たらいいなと思っています。

喜屋武⽒:
北総クルベジ生産者で、葉ニンニクを以前たくさん作っていた生産者が、中々売れずに苦労しました。
ちょうど来週から作付けするので、収穫の時期になったら連絡させていただきます。
生産者が作りたい、美味しいと思う食材を作るのは悪くないのですが、まずはお客さんが求めている食材を作って、そのクオリティを上げていくのが大切と思っています。井上料理長のお話を聞き、今後の参考にさせていただきます。

井上料理長:
葉ニンニクはスーパーで売られていない分、消費者からの認知度は低いと思います。使い方が知れ渡れば、葉ニンニクは売れる食材になると思っていて、一般的に知られていない食材の魅力発信は料理人のミッションと思っています。

環境に配慮された食材について

喜屋武⽒:
環境に配慮された食材を使われたことはありますか?

井上料理長:
はい、使っています。ちなみにバイオ炭が使われている食材を使うのは今回が初めてです。

喜屋武⽒:
バイオ炭をはじめ、環境に配慮した食材は価格が高くなることが多いのですが、その場合、どういったメニューであれば使いやすいとお考えですか?期間限定メニューとして取り入れる、特別メニューとして提供するなど、井上料理長のお考えをお聞かせください。

井上料理長:
ホテル内のレストランだからこそ、さまざまなお客様がいらっしゃるため、定義が難しいのですが、お手軽なランチから高単価のディナーメニューまで、積極的に使っていきたいと考えています。お客様が何気なく召し上がった食材を「美味しい!」と思ってくださる瞬間を積み重ねていきたい。そのためにも、幅広いお客様に向けて、魅力ある食材をまんべんなく提案していきたいと考えています。

喜屋武⽒:
今回、実際に自分たちが育てた食材を料理長に調理していただき、さまざまな発見や学びがありました。プロの視点からの意見や新しい使い方を伺い、今後の作付けや品目選定のヒントにもなりました。今回の機会を通して改めて「いいものを作り続けたい」という気持ちが強まり、これからもより良い農産物づくりに励んでいきたいと思います。